二十四節気は1年を24の節に分け、節気ごとに命名して気候の変化、推移を知り、社会や生活の中で季節感を役立てるものです。

「時間」という言葉は、一般的には、「時の流れのある一瞬の時刻」、あるいは、「ある時刻とある時刻の間の長さ」の意味で使われています。
ただし、「時間とは何か」といざ問われると、このテーマには、心理学・生物学・哲学・自然科学・物理学・宇宙論など、それぞれの分野の切り口があり、また、その時代によっても、多くの定義や考え方があるので、なかなか一概には説明しきれません。
そこで、ここでは、以下の5つの分野に分けて、「時間とは何か」についての代表的な考察を、3回に分けて、なるべく分りやすく整理してみたいと思います。

・心と体に流れる時間(体内時計)
・宗教や哲学における時間観の変化
・ニュートンのどこでも均一に進む「絶対時間」
・アインシュタインの伸び縮みする「相対時間」
・宇宙と時間の関わり

宇宙と時間の関わり

宇宙の誕生・膨張と時間の矢

宇宙は、無の状態から、小さな一点が超高温・超高密度になる「ビックバン」で誕生し、一様で等方な空間から始まりますが、膨張するにつれて、部分的に温度や密度が下がり、次第に星や銀河が誕生します。その後、時間の経過と供に、膨張がうまくいかず時空が歪んでひび割れするエリア、いわゆる「ブラックホール」が出来始めます。

このことは、宇宙そのものが、エントロピーの低い秩序だった特殊な状態から生まれ、適度な速さで膨張することで、低エントロピー状態から高エントロピー状態に、時間の矢が流れていることを示しています。
この適当な速さの宇宙膨張こそが、まさしく、時間の矢が流れる究極的な原因であり、すべての時間の概念の源だといわれています。

逆に言えば、宇宙空間の始まりと時間の始まりは同一で、宇宙が続く限り時間は続きます。もし、宇宙の膨張がいつの日か収縮に転じ、最終的には一点に収束すると、宇宙空間は終わり、その時が時間の終わりと考えられています。

タイムマシンは実現可能か?

現代の科学では、未来へのトラベルは、光速に近い速度で宇宙旅行をして地球に戻ってくればいいので、技術的な問題はともかく、原理的には可能というスタンスをとっています。

問題は、時間の矢に逆らって、未来から過去に後戻りするタイムトラベルです。
何人かの研究者がこのテーマを研究し、幾つかの説を発表していますので、代表的な説を二つご紹介します。

キップ・ソーン博士の「ワームホール」理論など

ブラックホールとは正反対に、物質を吐き出し続ける宇宙空間のひび割れをホワイトホールといいます。吸い込み口のブラックホールとこの吐き出し口のホワイトホールが繋がった時空の虫食い穴を「ワームホール」と呼んでいます。ワームホールの中では、重力が非常に強いために、時間の進み方が非常に遅く、移動時間がほぼゼロになると言われています。
アメリカの著名な物理学者キップ・ソーンは、1988年に、実際の宇宙では非常に遠い距離にある2点間が、このワームホールの穴の中を通過することで、瞬時に移動できるので、実際の時間の経過よりも早く移動が可能になる。これは、過去に遡って移動が可能ということである、という論文を発表しました。
また、続いて1991年に、その理論に基づいて、アメリカのリチャード・ゴッド博士が、「宇宙ひも」という物体を利用した、タイムトラベル理論を発表します。
幅が原子核よりも小さい1cmあたり10トンにも達するひも状の物体が亜光速で宇宙を漂っていて、この強力な重力が周囲の時空を歪ませるというものです。この歪みで、同じように過去へのタイムトラベルが可能という論文でした。
どちらも物理学の理論上は、成り立つというだけで、実際にそれが存在し、技術的に実現が可能かどうかは、まだまだ研究が必要なようです。

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因果律とパラレルワールド

スティーブ・ホーキング博士
スティーブ・ホーキング博士

有名な宇宙物理学者のスティーブ・ホーキング博士も、多くのタイムトラベル否定論者の一人ですが、彼らがその根拠にしているのは、「原因があってはじめて結果が生じる」という自然科学の根本原理=因果律です。

すなわち、映画の1シーンのように、誰かがタイムトラベルで過去に戻り、歴史を変えてしまうと、現在まで変わってしまう、という因果律に基づく時間のパラドックスに対して、それを覆す有効な理論が弱いために、過去へのタイムトラベルは出来ないというものです。

過去へのタイムトラベル肯定論者の中には、この因果律に対して、量子力学というミクロの世界の理論で、「パラレルワールド(多世界解釈)」という考え方をとって説明している例もあります。
過去に遡って歴史を変えた場合、その時点で、自分が来た未来とは別の世界で、別の未来が平行して展開される、というものですが、素粒子のような小さな質量の世界の理論を、全世界に当てはめるのは、かなり乱暴かもしれません。

宇宙の時間と宇宙の時計

現在の地球の時間は、地球の自転を利用した天体の日周運動の観測ではなく、各GPS衛星に搭載されている原子時計が刻む、狂いが10億分の1秒以下の超高精度な固有時を比較して、国際原子時として決められています。

一方、太陽系外ではミリ秒(1000分の1秒)単位で規則正しい電波・X線などの電磁波(パルス)を出す中性子星が観測されていて、それらをミリ秒パルサーと呼んでいます。特に「PSR1937+21」と呼ばれるミリ秒パルサーは、パルス周期が約1.6ミリ秒で安定していて、周期のふらつきは、100兆分の1近くにまで達しているそうです。
これによって、現在の国際原子時をミリ秒パルサーで補正する研究、すなわち原子時計よりも、更に正確なパルサー時計の研究開発も始まっています。

現在は、地球に住む人間に都合がいいように、地球上の国際原子時を、太陽系全体の座標時として扱っていますが、本来、広い宇宙空間では、惑星の相対的な位置によって、火星や木星などの固有時の進み方は異なっているはずです。
今後、人類の宇宙空間への活動領域が広がり、火星や木星に頻繁に行くようになると、それらの惑星用に、地球の座標軸とはあらかじめ原子時計やパルサー時計の周波数をずらした火星用時計、木星用時計が必要になるかも知れません。あるいは、太陽系の惑星を均等に考えた時間、すなわち、地球標準時ではなく、新たな「太陽系標準時」を作る、という議論が出でくるかも知れません。

参考文献

・どうして時間は「流れる」のか二間瀬敏史PHP新書
・Newton別冊「時間とは何か」ニュートンムックニュートンプレス
・図説雑学時間論二間瀬敏史ナツメ社
・ゾウの時間ネズミの時間本川達夫中公新書
・道元禅師の時間論角田泰隆駒沢大学
・1秒って誰が決めるの?安田正美ちくまプリマー新書

「時間」という言葉は、一般的には、「時の流れのある一瞬の時刻」、あるいは、「ある時刻とある時刻の間の長さ」の意味で使われています。
ただし、「時間とは何か」といざ問われると、このテーマには、心理学・生物学・哲学・自然科学・物理学・宇宙論など、それぞれの分野の切り口があり、また、その時代によっても、多くの定義や考え方があるので、なかなか一概には説明しきれません。
そこで、ここでは、以下の5つの分野に分けて、「時間とは何か」についての代表的な考察を、3回に分けて、なるべく分りやすく整理してみたいと思います。

・心と体に流れる時間(体内時計)
・宗教や哲学における時間観の変化
・ニュートンのどこでも均一に進む「絶対時間」
・アインシュタインの伸び縮みする「相対時間」
・宇宙と時間の関わり

ニュートンのどこでも均一に進む「絶対時間」

時間は常に一定の速さで流れるもの

クリスチャン・ホイヘンスが1656年頃振り子時計を完成させ、その後、より正確な機械式時計が普及するにつれて、「時間は常に一定の速さで流れる」という概念が定着していきます。
それを、常識として一般に定着させたのが、イギリスの科学者アイザック・ニュートンです。
彼が1687年に発刊した「自然哲学の数学的諸原理」という本で導入した概念は、「宇宙のどこに置かれていても、すべての時計は、無限の過去から無限の未来まで変化せずに同じペースで同じ時間を刻む」、そして「空間はどこも均質で、無限に広がっている」というものでした。この「絶対時間」と「絶対空間」をもとに打ち立てたのが、いわゆる「ニュートン力学」で、その後の科学者に大きな影響を与えました。

後にアインシュタインによって、非常に高速に移動している時のような特殊な環境下では、必ずしもこの考えが成り立たないと否定されてしまいますが、時間の概念を科学的に定着させる上では、最も有名な理論で、現代人の時間観には、未だこの考え方が支配的です。

ニュートンの絶対空間に設定された「絶対時間」

アイザック・ニュートン
アイザック・ニュートン

ニュートンは、常に物体は絶対静止した状態にあるか、そこから落下などして、絶対速度で運動しているかのどちらかだとして、その基準として、3本軸の空間座標による「絶対空間」を設定しました。そして、この空間の中で、何にも影響されず、いつでもどこでも一様に流れる時間を「絶対時間」として定義したのです。

絶対という意味は、時間も空間も物体の運動とは関係なく、それぞれ独立して存在するということで、その中で物体が運動する「入れ物」にすぎないという考え方です。
彼は、ニュートン力学の根幹である「ニュートンの運動の3法則」を合理的に説明するために、そう捉えたのです。

アインシュタインの伸び縮みする「相対時間」

アインシュタインの「特殊相対性理論」

19世紀に入ると、オーストリアの物理学者マッハが、宇宙のあらゆる物質がなくなったら、何の変化も起こらないので、時間そのものが存在しなくなる。よって、時間は絶対的なものではなく、物質との相対的な関係で存在するという概念「相対時間」を主張しました。

これが、ドイツの物理学者アルベルト・アインシュタインの相対性理論に大きな影響を与えました。
アインシュタインは、1905年に発表した特殊相対性理論で、「時間の進み方は、観測者同士のすれ違う速度(相対速度)が小さいうちは眼に見えた時間の差とはならないが、相対速度が亜速度(光速に近い速度)になってくると、眼に見えた時間の差が現れてくるので、どんな時でも一定ではなく、観測者によって異なる」と主張したのです。
これは、「時間は観測者ごとに存在する」ということであり、また、それまでの物理理論では概念上切り離されていた時間と空間を結びつけて、時間と空間が一体となった「時空」という概念を作り、その「時空は観測者の運動状態によって、遅れたり歪んだりして変化する」、という衝撃的な理論でした。

なぜ時間は伸び縮みするのか?

アルベルト・アインシュタイン
アルベルト・アインシュタイン

彼の理論を分りやすくいうと、「止まっている人から見ると、光速で動いている人の時計が示す時間は遅れる」ということです。

光の速度は、「光速度不変の原理」によって、止まっている人から見ても、光速に近い宇宙船に乗っている人から見ても、同じ30万Km/秒で移動しています。ここでは、仮に、底と蓋の上下に鏡のある光時計が、地上で止まっている人の側にも、宇宙船に乗っている人の側にも1つづつあって、それぞれの光時計の底の光源の鏡から出た光が蓋の鏡に到達するまで、どちらも1秒かかるとします。
宇宙船に乗っている人が、宇宙船の中で時間を計ると、止まっている時と同じ1秒の時間が等しく経過します。これは、「相対性原理」によって、宇宙船もその中の時計も同じ速さで動いているので、止まっている時と同じ物理現象が起こることによります。
一方、地上で止まっている人が、地上から光速に近いスピードで動いている宇宙船の時計を見ると仮定すると、地上で止まっている光時計よりも、宇宙船は横方向に遥か長い距離を進んでいるので、地上の光時計で1秒が経過していても、宇宙船内の光時計はまだ1秒が経過していない現象が現れます。このことから、「止まっている人からみると、動いている人の時間は遅れる」ということが証明されます。

「ウラシマ効果」という言葉がありますが、宇宙船に乗って光速に近い速度で宇宙旅行をして数年後に地球に戻ると、亜光速の宇宙旅行中は時間の進みが遅れるので、そこは遥か未来の地球だったという話です。

この光速に近づくと起こる時間の縮みに、時間だけではなく、物、あるいは、空間自体も縮み、その時、質量とエネルギーが増える、ということを加えたのが、いわゆる「特殊相対性理論」です。

重力の影響を加味した「一般相対性理論」

更に、これに重力の影響や加速・減速を加味した重力理論が「一般相対性理論」です。
簡単に言えば、重力も時間を遅らせる原因となるという訳です。重力は地球の中心から離れるほど弱くなるので、エベレスト山頂にある時計に比べて、地上にある時計はごくわずかですが、ゆっくり進むというものです。また、重力は、時間を遅らせると同時に、空間(光)を曲げる原因になり、重力が大きければ大きい程、曲がり具合も大きくなり、一定以上重力が大きくなると、光さえも吸い込まれる空間の歪み、いわゆる「ブラックホール」が出来ます。
強力な重力を持つブラックホールの境界面にある宇宙船やその中にある時計は、その当事者にとっては、いつもと同じスピードで動いているのですが、それを充分離れた場所から観察すると、宇宙船もその中の時計も止まってみえます。
時間の進み方の遅い早いというのは、あくまで二つ以上の場所の比較によって、相対的に認識されるという訳です。

時間の矢の向き」とエントロピーの増大

エントロピー増大の時間の矢
エントロピー増大の時間の矢

時間の過去から未来への流れを考える時、時間の方向性が未来から過去に後戻りできる可逆現象なのか、決して後戻りできない非可逆現象なのか、を「時間の矢の向き」を使って、良く考察します。

例としては、熱が時間とともに高温部から低温部に流れる「熱力学的な時間の矢」、池に石を投げたときに、あるいは、放送局の電波が、その中心から周囲に広がっていく「波動の時間の矢」、そして、動物の「進化の時間の矢」は、どれも元に戻らないので、非可逆現象です。

これらの現象を物理学的にいうと、秩序だった構造・状態が、時間の経過とともに無秩序な構造・状態に向かっているので、「無秩序さの度合い=エントロピー」が増えている状態といい、これを「エントロピー増大の法則」と言います。
たとえば、升目にそってきちんと並べられた全て白のオセロのコマを、箱ごと数回ランダムに揺らすと、コマは升目から外れて、多くのコマが反転して黒になります。
秩序だった状態とは、統計的に実現確立が極めて小さい、たとえば、升目に沿ってきちんと並んだ全て白のコマの状態で、無秩序な状態とは、実現確立が高い、升からずれた白黒のランダムなコマです。

このように、エントロピー増大の法則とは、物理的には当たり前の話で、実現される確率が低い状態を最初に用意すれば、時間が経つにつれて実現確率が高い状態に落ち着くことを言います。
したがって、時間の矢とは、私たちの身の回りで観察する現象で、無数の粒子が平均的な振る舞いをすることによって現れる、ことを示しているのです。

参考文献

・どうして時間は「流れる」のか二間瀬敏史PHP新書
・Newton別冊「時間とは何か」ニュートンムックニュートンプレス
・図説雑学時間論二間瀬敏史ナツメ社
・ゾウの時間ネズミの時間本川達夫中公新書
・道元禅師の時間論角田泰隆駒沢大学
・1秒って誰が決めるの?安田正美ちくまプリマー新書

    「時間」という言葉は、一般的には、「時の流れのある一瞬の時刻」、あるいは、「ある時刻とある時刻の間の長さ」の意味で使われています。
    ただし、「時間とは何か」といざ問われると、このテーマには、心理学・生物学・哲学・自然科学・物理学・宇宙論など、それぞれの分野の切り口があり、また、その時代によっても、多くの定義や考え方があるので、なかなか一概には説明しきれません。
    そこで、ここでは、以下の5つの分野に分けて、「時間とは何か」についての代表的な考察を、3回に分けて、なるべく分りやすく整理してみたいと思います。

    ・心と体に流れる時間(体内時計)
    ・宗教や哲学における時間観の変化
    ・ニュートンのどこでも均一に進む「絶対時間」
    ・アインシュタインの伸び縮みする「相対時間」
    ・宇宙と時間の関わり

    心と体に流れる時間(体内時計)

    年をとると、時間の経つのが速く感じられるのはなぜ?

    時間に関する感覚として、多くの大人が、「子供の頃は時間が長かったのに、大人になると時間はあっという間に過ぎ去ってしまう」と感じている、とは良く言われる話です。

    この理由として、たとえば7歳と70歳を比べた場合に、7歳児の1年は生涯の7分の1もの長さである一方、70歳にとっての1年は生きてきた内のたった70分の1なので、この比率の違いが、心理学的な時間の評価を決めているという説が一般的です。

    加えて、子供は、日々新しい出来事を体験するので、多くの記憶がフレッシュな脳に鮮明に残りますが、大人は、過去と同じような体験を繰り返すばかりなので、脳の海馬がいちいち記憶していなく、気が付いたらすぐに1年経ってしまった、という理由も良くあげられます。

    体内時計の存在

    人類も動物も長い間、朝起きて、昼働き夜寝る、という1日周期で生活をして来ましたので、1日24時間周期の生活のリズムが、脳と体に染み付いています。

    生物の体内に時計の役割をする機能があって、この時計を体内時計(生物時計)と呼んでいます。たとえば、時計のない遮断された部屋で何日か過ごしても、人間も動物も約24時間の周期で規則正しく寝起きすると言われています。どうしてかというと、どの生物にも種を保存するために、「環境に適応して生存のチャンスを増やす」という本能としての適応能力があるからです。

    体内時計の周期はどうしてつくられているのか?

    では、体内時計で、機械式時計の振り子やてんぷのような周期を生み出す基準をつくっているものは何でしょうか。答えは、細胞内部において1日24時間周期で蓄積されては分解される、たんぱく質の働きです。細胞内のたんぱく質が、朝活動とともに増えて、夜になると減るという、この約24時間周期で質量が増減する仕組みが、体内時計として24時間をはかっているのです。このメカニズムによって、生物はホルモン分泌リズムを生み出し、朝決まった時間に覚醒して目覚め、夜自然に睡眠をとれるようになるのです。

    最近のバクテリアの研究によって、このたんぱく質はリン酸基がくっつくリン酸化と、離れる脱リン酸化を24時間周期で繰り返していることも、わかってきています。

    動物の生物学的な時間

    時間のテンポは、動物によって違うと言われています。動物の大きさと心臓の鼓動、寿命には密接な関係があって、一般的に体重が重くて体が大きな動物ほど長生きをします。

    体が大きい動物ほど心臓の鼓動は遅く、たとえば、ネズミの心臓は、おおよそ、0.1秒に1回、ヒトは1秒に1回、ゾウは3秒に1回鼓動します。心臓が1回打つ間に消費されるエネルギー量はどの動物でも同じで、心臓が約15億回撃つと寿命になるそうなので、ネズミの寿命は短く、ゾウの寿命は長いということです。

    このことによって、体重が重い動物ほど、血液の循環から、消化・排泄、成長、細胞の寿命などの生理的時間もゆっくりになるため、結果として長い寿命を、ゆっくりしたテンポで生活しているということが言えます。
    理由はわかりませんが、一説によると、心周期や寿命などの体内の時間は、体重の1/4乗に比例しているそうです。1/4乗というとわかりにくいのですが、体重が16倍(2の4乗倍)になれば時間は2倍、81倍(3の4乗倍)になれば3倍、256倍になれば4倍になるということです。
    それぞれの動物がその進化の過程で、同じ1日でも、体重やサイズによって、設計されている一生の時間の長さや、おそらく感じている1日の長さが違うというのは、非常に興味深い話です。

    宗教や哲学における時間観の変化

    古代からの宗教における時間の概念

    古代エジプト、ギリシャ、マヤなどの多くの古代文明の宗教では、神々が創造した世界は、創造-存続―終末-破滅...を周期的に繰り返す円環的な構造になっており、無限に反復するので、時間は同じ道を辿るという意味で逆戻りも反復も可能なもの、あるいは、そうしながら永遠に続くものと考えられていました。

    また、仏教やヒンドゥー教などのインド哲学や東洋思想でも輪廻転生と言って、死んであの世に還った霊魂が、何度も生まれ変わるという、同じような考え方がありました。
    ユダヤ教にも一部円環的な時間観が見られますが、キリスト教では、神の啓示によるイエス・キリストのこの世への到来と死・復活は、不可逆的で反復不可能なものとされています。

    ただし、10世紀以前のキリスト教の布教がまだ限定的な時代にあっては、日時計・水時計・燃焼時計など以外に、時間を計る道具も無く、一般の人々にとっての時間の意識はまだまだ薄いものでした。時間とは、季節の変り目や毎年の収穫によって、年単位で繰り返されるもの、という概念でした。
    11~12世紀以降に、キリスト教が一般人の生活に影響を及ぼすようになって、繰り返される円環的な時間の観念が否定され、時間とは、終末に向かって進んでいく、神が支配する直線的なもの、という概念に変わって生きます。

    道元禅師の時間論

    道元禅師
    道元禅師

    「時間とは何か」に関して説いた日本人では、曹洞宗の開祖で、鎌倉時代に活躍した禅僧、道元が有名です。彼が遺した「正法眼蔵」の「有時」という巻で、以下の様に述べています。

    「(仏は)あるとき(有時)は高い山頂に立ち、あるときは深い海底を行く....
    松や竹にも時間はあり、我にも時間はある....
    存在とは時間であり、時間とは存在である...
    時間がなくなってしまえば、山や海もなくなってしまう....
    時間があるということは、生きているということだ....(口語訳)」

    すなわち、道元の「有時(あるとき)」とは、「有(空間・存在)」と「時(時間)」、時間と空間・時間と存在は、常にひとつで、私たちの人生は、常に「今・ここだけ」にあること。静止している松などの植物も人と同じように、時間と空間を構成しているものだ、と考えたのです。
    そして、人生とは「今・ここだけ」の瞬間を、修行をしながら仏と一つになって、懸命に生きていくことだ、と説きました。

    宗教から離れた「時間意識の革命」

    14世紀始めに西洋で機械式時計が発明され、15~16世紀になって、機械式時計が教会・修道院のみならず、各地の市庁舎広場や市場に建てられ、より正確な機械式時計が普及していきます。こうなって初めて、不定時法から定時法への変換がなされ、市民は、初めて1日単位あたり、1時間単位あたりの生活を意識し出します。

    これが、まさに、神が支配していた時間から、神から離れた客観的な時間への「時間意識の革命」で、広場の塔時計によって、時間は神の手から自由都市を牛耳る商人たちの手に渡り、商人達が、その地域の経済・社会・政治を支配する道具へと変わっていったのです。

    古代ギリシャの哲学者の考えた時間

    古代ギリシャの哲学者プラトンは、惑星の運動が、時計を巻くぜんまいのように、時間を進めていると考えたようですが、弟子のアリストテレスは、惑星の運動とは関係なく、運動の先後における数、すなわち物事が起こる前後の順番によって時間は決まると定義しました。
    まだ、紀元前4~5世紀の話です。

    その後、多くの哲学者は、時間を空間と共に、人間が存在し何かを認識するための最も基本的な枠組みと捉え、あらゆる事が、過去から現在、未来へと流れていくと考えました。
    あるいは、時間は心と無関係に外部で流れているものではなく、過去の記憶と、未来への期待を含みながらも、現在を中心にした心の働きと関係している、と考えた者もいました。

    ニュートン以降の哲学者の考えた時間

    17世紀後半に活躍したニュートンの「絶対時間・絶対空間」の考え方は、この後詳しく触れますが、その考え方を簡単に言うと、「時間はいつでもどこでも、常に同じ速さで流れる」というものです。

    何人かの哲学者は、それに異論を唱えます。有名なものは、18世紀後半に活躍したイマヌエル・カントで、彼は、時間と空間を、絶対的なものではなく、人間の主観や直感、感性のあり方によって変わるもので、様々な時間や空間で起こる現象を認識し得ると考えたのです。

    参考文献

    ・どうして時間は「流れる」のか二間瀬敏史PHP新書
    ・Newton別冊「時間とは何か」ニュートンムックニュートンプレス
    ・図説雑学時間論二間瀬敏史ナツメ社
    ・ゾウの時間ネズミの時間本川達夫中公新書
    ・道元禅師の時間論角田泰隆駒沢大学
    ・1秒って誰が決めるの?安田正美ちくまプリマー新書

    八木雲水プロフィール
    セントラル総合研究所・八木宏之
    八木雲水
    開運占卦気学祐気方位鑑定

    「淮南子」(紀元前170年ごろ編纂)を信奉、陰陽家五行説、古神道、納音、暦を観ながら時の政権の為政者、経営者、リーダーの悩みや向かうべき方向を示唆している。 平成6年、畿内にて陰陽道、道教、妙見信仰を教学、「空」の存在を認識し先人の英知を得る。為政者、経営者へ経世在民を指導、信条の「ともに歩む」を基本に、激変する社会環境でこれからの進むべき道しるべを標榜している。

    平成21年首相直轄諮問会議「経済政策諮問会議」メンバー、政策立案にも携わり「中小企業金融円滑化法」立案にコメントする。経済書籍、小説など著書15冊以上を出版、42歳で透析患者、55歳で腎臓移手術以来リハビリの成果で健康的な生活が出来るまでに回復した。 令和2年武漢肺炎(新型コロナウイルス)の慢性既往症ある知人が家族にも看取られないまま悲惨な最期を迎えたと知り、一刻も早いコロナ禍の終焉を願っている。

    ≪宗旨、所属≫臨済宗雲水、町田宗鳳禅師に師事、天河弁財天社たたら講構成員、祐気採りの会斎主

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